2007年6月12日火曜日

交感神経切断術で多汗症を抑制

皮膚の汗腺を刺激する神経を切断する外科手術が、多汗症治療に有用であることが新しい研究で示された。

 過剰な発汗に悩む多汗症患者は、世界人口の3%にあたる約1億9,700万人存在するといわれる。通常の3~4倍量の発汗がみられ、主に手のひら、腋(わき)の下、顔、足などに症状が現れる。正確な原因はわかっていないが、汗腺を刺激する神経が過剰に作用することにより生じるとされている。治療法には、局所的および経口による薬物療法、ボトックス注射、イオン導入などのほか、このような治療で効果がみられない場合は外科手術という選択肢もある。

 米Barrowバロー神経学研究所(BNI、アリゾナ州)のチームによる今回の研究では、両側の胸腔鏡下交感神経切除術を受けた多汗症患者300人の経過を調べた。この手術は、3カ所の小さな切開部から小型ファイバーカメラおよび手術器具を挿入し、多汗の原因となる神経を切断するというもので、極めて侵襲性が低い。被験者のうち129人は手のひら、11人は腋の下、160人は手のひらと腋の下の両方に過剰発汗がみられる患者であった。

 この手術により、患者の99.3%で手のひらの多汗症が治まり、61%で腋の下の多汗症が治まった。合併症としては、不整脈2例、術後うつ病1例、術後気胸(胸腔に空気がたまる病態)9例が認められ、このうち5例は胸腔チューブによるドレナージを要した。胸膜癒着のため予防的に胸腔ドレナージを要した患者が4例であった。

 このほか、16例に胸、背中、脚など別の部位に多汗が生じる代償性多汗症が認められたほか、7例に誤って神経を損傷したことによるホルネル症候群がみられた。ホルネル症候群では、顔面の発汗、瞼(まぶた)の下垂、神経損傷のある側の瞳孔縮小などがみられる。さらに、6例に肋間(ろっかん)神経の損傷による肋間神経痛が認められた。

 この研究は、ワシントンD.C.で開催された米国脳神経外科学会(AANS)の年次集会で発表された。

(HealthDay News 4月17日)